2012年1月16日月曜日

君が代不起立、停職・減給は「慎重に」 最高裁 2人の処分の取り消し(日経新聞2012.01.16 )

卒業式などで国歌斉唱時に国旗に向かって起立せず、懲戒処分を受けた東京都の公立学校の現・元教職員ら計約170人が処分取り消しなどを求めた3件の訴訟の上告審判決が16日、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)であり、停職2人のうち1人と、減給1人の処分を「裁量権の乱用で違法」として取り消した。残る停職1人と戒告の処分は適法と判断した。

 同小法廷は、減給以上の処分は「行為の性質を踏まえた慎重な考慮が必要」と指摘。学校秩序を大きく害する行為で過去に処分歴があるなど具体的事情がない限り、違法とする初判断を示した。

 国旗に向かっての起立と国歌斉唱を求めた校長の職務命令違反に対する過重な処分に一定の歯止めをかけた形。橋下徹大阪市長率いる地域政党「大阪維新の会」が成立を目指し、命令違反3回で免職とする教育基本条例案にも影響しそうだ。

 同小法廷は判決理由で、減給や停職処分ができるのは「規律や秩序を大きく害する行為で処分歴があるなど、処分による不利益と比べても、なお処分が必要な場合に限られる」と説明。処分が不適当な例として、停職は「過去1、2年に数回の不起立処分歴だけの場合」、減給は「過去1回の不起立処分歴だけの場合」と具体的に指摘した。

 その上で、2年で3回の処分歴があり停職1カ月とされた1人と、過去1回の処分歴で減給とされた1人の処分を取り消した。国旗を引きずり降ろすなどして懲戒5回と訓告2回の1人の停職3カ月は「重すぎない」と判断、戒告の168人は「裁量の範囲内」とし、いずれも適法とした。

 5人の裁判官中4人の多数意見。宮川光治裁判官(弁護士出身)は「教員の精神の自由はとりわけ尊重が必要。違法性は極めて希薄で、戒告でも重すぎる」と反対意見を述べ、処分は全て取り消すべきだとした。

 一、二審判決によると、原告らは2003~06年、不起立やピアノ伴奏拒否を理由に都教育委員会から懲戒処分を受けた。一審は3件の訴訟とも原告側敗訴。二審は戒告と減給に関する2件で原告側、停職の1件で都側がそれぞれ勝訴した。

 最高裁判決後、原告らは記者会見し、減給取り消しが確定した元教員、渡辺厚子さん(61)は「処分の累積を許さないという判断は大きな勝利だ」と指摘。弁護団も「免職に行き着く処分システムに歯止めがかかった」と一定の評価を示した。

 大原正行・東京都教育長は処分取り消しの判決について「厳粛に受け止める」とコメントした。

NIKKEI.com(2012.01.16 19:09)

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