2012年2月25日土曜日

「14年連続自殺者3万人」の国、日本(渡邉美樹NET 2012.01.20)

先日、新聞に小さな記事が載っていた。  警察庁が2011年の全国の自殺者の速報値を発表したのだ。その数3万513人。 なんと、3万人を超えたのは98年から14年連続だ、という。  都道府県別では東京都が最多で3100人。大阪府1899人、神奈川県1824人と続く。 人と人の繋がりが薄い大都市で自殺者数が多いのだろう。 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県は400人、宮城県は483人、福島県は525人だった。  私はカンボジアに縁が深い。 私が代表理事を務める、公益財団法人「School Aid Japan」は多くの方々の協力を得て、 156校の小中学校、孤児院を一施設これまでに作ってきた。30回以上カンボジアを訪れただろうか。  しかし、私は私の周りのカンボジアの人たちから、誰かが自殺したという話を聞いたことがない。 カンボジアで自殺者がいないとは思わない。 ただ、生きるのが必死の彼らが自ら命を絶とうとは考えないのではないか。 何とか生き抜いてやるというエネルギーをひしひしと感じる。  日本とカンボジアを比べても仕方がないが、圧倒的に日本の方が経済的には豊かだ。 しかし、14年連続で毎年3万人以上自ら命を絶つ社会が真に豊かと言えるだろうか。 我々はあまりに、無関心になってはいないか。その膨大な数に痲痺していないか。  政府のなかに内閣府自殺対策推進室がある。しかし、自殺はいっこうに減らない。 3万人ひとりひとりの自殺の背景をどれだけ細かく把握しているのか。それがなければ対策も何もない。  自殺者は社会のカナリアだと思う。カナリアは坑道などでいち早く有毒ガスを検知する。 「我々の社会はおかしいぞ」と自殺者の方々は、自らの命を絶って訴えているのかもしれない。  「自殺者ゼロの社会」。  都知事選で訴えさせてもらった。実現できたらどんなにすばらしいことだろう。

大阪府立高津高校民間人校長問題:大阪弁護士会が勧告(きょういくブログ 2012/01/14)

大阪府立高津高校(大阪市天王寺区)の教員らが、民間人校長・木村智彦氏(在職2002年4月~2006年3月)から暴言などを繰り返し受けたとして人権救済を申し立てていた問題で、大阪弁護士会は2008年12月26日付で、大阪府教育委員会に対して相談体制の確立や第三者機関の設置など人権侵害発生防止の体制を整えるよう勧告していたことがわかりました。  木村氏は大阪府では初めての民間人校長として、2002年度に高津高校に着任しました。木村校長はトップダウン的改革をおこなおうとして教職員と対立し、意見の異なる教職員に対して大声で怒鳴りつけたり机をたたくなどの威圧的な行動を繰り返しました。木村校長の言動は2002年時点から問題となり、教職員らは教職員組合の支援も得ながら繰り返し話し合いでの解決を図り、また大阪府教委にも訴えていました。しかし事態は悪化する一方で、校長の言動が原因で抑うつ症状を発症して通院や休職・退職に追い込まれる教職員も複数いたということです。  教職員らは2006年3月23日、大阪弁護士会に人権救済を申し立てました。木村校長はその翌日に辞職願を提出し、同年3月末で退職しました。  教職員らは校長の辞任について「訴えが一定の実を結んだ」としながらも、今後同種の事例を再発させないためとして人権救済の申立は取り下げませんでした。弁護士会の調査の結果、今回の勧告となりました。  この問題は教育改革や民間人校長の問題以前に、職場でのパワハラというべきものでしょう。また学校という組織上、校長が率先して教員をいじめているようでは、生徒間のいじめの指導などできるのでしょうか。  また大阪府教委も2002年時点から問題を把握していたにもかかわらず解決に4年もかかり、しかも被害が広がっていたというのは困ったことです。もっと的確に対応すれば被害も最小限に抑えられたのではないかといえます。今後同種の事例の発生を防止するためにも、可能な限り対策をとっていくことが求められます。  なお木村氏は退職後の2006年12月、私立浪速中学校・高校を運営する学校法人大阪国学院(大阪市住吉区)の理事長に就任し、さらに2007年4月以降は浪速中学校・高校の校長も兼任しています。このような人物が教育関係職をつとめていることは大丈夫なのでしょうか。

大阪・浪速中の入試虚偽説明:関大、今年度で浪速中高と連携解消 推薦宣伝に反発(mainichi.com/ 2012.02.24)

大阪市住吉区の私立「浪速高校・関西大学連携浪速中学校」(木村智彦校長)が、実際には取り決めがないにもかかわらず、中学に設置した「関大コース」に入れば関西大学(大阪府吹田市)に推薦入学できると宣伝していた問題で、関大は信頼関係が損なわれたとして今年度末で浪速中・高との連携協定を解消する方針を固めた。少子化を背景に私立学校の高大連携は増えているが、推薦入学を巡って解消するのは異例で、連携の在り方が厳しく問われそうだ。【林田七恵、日野行介】  関係者によると、この問題が毎日新聞の報道で表面化した昨年10月以降、協定を結んだ関大の理事会は、既に在籍中のコース生(約100人)の受け入れを求めたが、承認権限を持つ各学部の教授会が激しく反発していた。最終的に、今年度末で連携協定を解消する一方、高校時点で、併設校(事実上の付属校)の関大一高や関大北陽と同じレベルで、一定の成績を満たしたコース生に限り、1学年30人を上限に受け入れる方向でまとまった。この方針は22日にあった各学部の教授会で報告された。  浪速中では既に新年度の入学手続きが終わっており、12年度に入学するコース生の受け入れについては今後検討される見通し。  一方、教授会の要請で、関大内では調査委員会が設置された。趣旨が不透明な連携協定を結んだ経緯や、理事会側の責任の所在などについて3月末までに報告書をまとめる。  木村校長は昨年10月、浪速中の「関大コース」(中高一貫)に入れば「間違いなく関西大に(推薦)入学できる」と入試説明会で発言し、パンフレットにも同趣旨を記載していた。関大コースは、関大と学校法人間で結んだ連携協定に基づき、10年度から設置された。しかし協定は教職員の人事交流が目的で、中学校名に限って関大連携を付けることは認めたが、推薦入学については「別に協議する」としか書かれておらず、具体的な取り決めはなかった。  関大は広報室を通じて「コメントする段階ではないので差し控えたい」としている。 ==============  ■視点  ◇「ブランド貸し」検証を  関西大学が浪速中・高との連携を解消せざるを得なかった背景には有名私大としての「ブランド」を守りたいという意向がある。しかし少子化時代を迎え、高校・中学の系列化を進める私立大学間の生き残り競争が激化する中、安易に名前を貸した関大側の対応は批判されるべきだろう。  連携協定締結当時(09年6月)の関係者によると、浪速側は関大コース生の推薦入学受け入れを求めたが、学力レベルを不安視した関大側が認めず、「関大」の名前を中学校に付けることだけを認める曖昧な内容になった。その結果、浪速側はブランドを生徒募集に利用、混乱を招いた。  浪速中・高を巡っては、虚偽説明による生徒募集以外にも、▽大学合格者実績の「水増し」▽未払い残業代を9割放棄させた--の問題が明らかになっている。共通するのは、教育と懸け離れた過剰な経営優先の姿勢だ。  私立学校のブランドはあくまでも教育現場としての高い評価だ。双方とも今回の問題を厳しく検証、透明性を高め、再出発につなげることが求められている。【林田七恵】 毎日新聞(2012.02.24 朝刊14版)

留年:OECD、廃止を提言 初・中等教育「非効果的」(毎日新聞 2012.02.24 )

経済協力開発機構(OECD)は、学校教育での留年について「コストがかかるうえ教育成果の引き上げでも効果的ではない」として、廃止を求める教育政策の提言をまとめた。OECDは国際学力テスト「学習到達度調査」(PISA)を実施するなど、教育界に大きな影響力がある。大阪市の橋下徹市長は学力不足の小中学生に対する留年の検討を始めたが、留年の教育効果に批判的な提言が今後の論議に影響を与える可能性もある。  OECDがまとめたのは「教育の公平性と質-恵まれない生徒や学校に対する支援」と題する報告書。落ちこぼれを防ぎ経済成長や社会の発展につなげる教育政策を提言した。  留年の分析では、少なくとも1年留年した経験のある15歳の比率と初等中等教育への総支出に占める留年コストについて原則07年のデータを基に39カ国を比較。OECD平均は留年経験者が13%、コストが4・05%。フランスなど7カ国は留年経験者が30%を超え、このうちスペインなど3カ国はコストが10%以上だった。日本、韓国、ノルウェーはいずれもゼロだった。  留年の欠点はコスト増に加え、学習到達度の生徒間格差の拡大、自尊心への悪影響、問題行動に出る傾向を高めることなどを列挙。留年より効果的な代替策として学習支援や自動的な進級を推奨した。【木村健二】 毎日新聞(2012.02.24 朝刊14版)

不起立教員8人 松井知事「子供たちに悪影響」、橋下市長「公務員をやめろ」(産経新聞 2012.02.24 21:46)

松井一郎知事は24日、記者団に「注目された中で、わざと違反をするのは、組織の一員としてあってはならない。公務員組織の中にいるのではなく、自分の考えを訴えて、政治の道を志したらいい」と批判。  「ルールを率先して破る先生を目にすれば、子供たちにとって非常に悪い影響を与える」と述べた。  国旗国歌条例成立時の知事だった大阪市の橋下徹市長は同日、「その8人の人に府民は公務員をやってくださいと頼んでいない。公務員をやめたらいい。勘違いしすぎだ。教育の現場に携わってもらってもかまわないが、公務員という身分をはずして自由にやれっていいたい」と、憤りを隠さなかった。  これに対し、共産系の大阪教職員組合は「新たな強制押しつけの強化で、内心の自由を保証した憲法に違反している」と、強く反発している。

2012年2月24日金曜日

八重山教科書:竹富教委、寄贈で調達へ(沖縄タイムス 2012.02.23 09:47)

【竹富】八重山地区の中学公民教科書問題で、文部科学省から東京書籍版を使用する場合は「無償措置の対象外」とされている竹富町教育委員会(竹盛洋一委員長、委員5人)は22日、臨時会を開き、一般住民からの寄贈で同版教科書を調達することを決めた。だが個人の教科書購入は通常、無償給付が終了した4月中旬以降。新学期に間に合わない懸念も出ており、県教育庁は「新学期に確実に教科書が届くよう、可能な限りの対策をとる」と同町を支援していく姿勢を示した。  同町教委は寄贈受け入れについて、新学期に間に合わせるための暫定的な措置とし、国には今後も無償給付を訴えていくことも確認した。その上で竹盛委員長は「新学期に教科書を間に合わせることが第一目標」と強調し、具体的な給付方法については「県の助言を受けながら進めたい」とした。  町の来年度の新中学3年生は21人で、教科書の購入費用は約1万5千円。国が同町を「無償対象外」とした昨年10月以降、町教委には県内外から寄付や寄贈の申し出が相次いでいる。  県教育庁義務教育課は「国が無償給与すべきだとの立場は変わらない」とした上で、同町の判断を尊重するとの見解を示した。さらに「同町の生徒たちが、新学期に教科書が間に合わない事態は避けなければいけない。他市町村と同様に教科書を届けるための働きかけは惜しまない」としている。

2012年2月22日水曜日

教員への政治活動アンケート「実施せず」 大阪市教委(Asahi.com 2012.02.21)

大阪市が全職員に政治活動への関与の有無を尋ねた記名式アンケートについて、教員にも調査対象を拡大するよう求められていた市教委は、21日の教育委員会会議でアンケートを実施しないことを決めた。  アンケートは組合活動への参加歴や職場関係者からの投票依頼の経験の有無などを尋ねるもので、橋下徹市長が業務命令として全職員に回答を義務づけていた。だが労組側が大阪府労働委員会に救済を申し立てるなどしたため、市は今月17日、回収したアンケートの開封や集計を一時凍結。これを受け、市教委も「市側が凍結を決めた以上、市教委としても実施する必要はない」と判断した。  また会議では、橋下市長が市議会に提案する市教育基本条例案の原案が市教委事務局から示された。府条例案の規定を踏襲する一方、前文で「我が国と郷土大阪を愛し、大阪らしい新しい文化の創造をめざす」とし、府条例案にはない愛国心の育成を教育理念として位置づけた。教育委員から「様々なルーツを持った子どもがおり、愛国心のくだりは必要ない」との声が出て、再度議論することになった。(阪本輝昭) 朝日新聞(2012.02.21 夕刊4版)

ワタミ社員の自殺、労災認定 入社2カ月の女性(Asahi.com 2012.02.21)

居酒屋「和民」を展開するワタミフードサービス(東京)の神奈川県横須賀市の店に勤め、入社2カ月で自殺した女性社員(当時26)について、神奈川労災補償保険審査官が労災適用を認める決定をしたことがわかった。横須賀労働基準監督署が労災を認めず、遺族が審査請求していた。  決定は14日付。決定書や代理人弁護士によると、女性は2008年4月に入社し、横須賀市内の居酒屋に勤務。連日午前4~6時まで調理業務などに就いたほか、休日も午前7時からの早朝研修会やボランティア活動、リポート執筆が課された。6月12日、女性は自宅近くのマンションから飛び降りて自殺した。  審査官は、深夜勤務で時間外労働が月100時間を超え、休憩や休日も十分に取れなかったと指摘。不慣れな調理業務に就いていたことにも触れて、「業務による心理的負荷が主因となって精神障害を発病した」と認定し、業務と自殺の因果関係を認めた。  女性の父親(63)は「過酷な労働条件で、会社に責任があると認められたのはよかった。同じ状態で働いている人を少しでも救ってほしい」と話した。  親会社の「ワタミ」は「内容を把握していないため、コメントは差し控えさせていただきます」としている。 Asahi.com(2012.02.21)

2012年2月21日火曜日

早大入試に「君が代処分問題」 受験者数を問い合わせ 都教委、一部都立高校に(日経新聞2012.02.20 夕刊 4版)

早稲田大法学部が15日に実施した入学試験の問題で、公立高校での国歌斉唱を巡る教員処分問題を取り上げたことに対し、東京都教育委員会が一部の都立高校に、受験者数などを問い合わせていたことが、20日分かった。都教委は公立学校の教員に起立斉唱を命じる通達を出している。  問題を扱ったのは同学部の受験科目のうち選択科目の「政治・経済」。問題文は「卒業式や入学式で君が代斉唱時に起立しない教員を処分する措置の合憲性が裁判で争われている。何が問題なのか」などと記載。その上で、都の場合に「不起立者に懲戒処分を課しているのは誰か」として、校長、教育委員会、知事などから選ばせる問題などを出題した。 NIKKEI.com(2012.02.20)

2012年2月7日火曜日

君が代不起立で訓告、元教諭の処分取り消さず 大阪地裁(朝日新聞 2012.02.07 朝刊 14版)

卒業式の君が代斉唱時に起立しなかったことなどを理由に訓告処分を受けたのは不当だとして、大阪府門真市立中学校の元教諭の川口精吾さん(58)が門真市と同市教委を指導・監督する大阪府に対し、処分の取り消しと200万円の慰謝料の支払いを求めた訴訟の判決が6日、大阪地裁であった。  中垣内(なかがいと)健治裁判長は処分の取り消し請求について、「訓告は法令で定められた処分ではなく、裁判で取り消す対象にはあたらない」として却下。「当時の校長は学習指導要領に基づき儀礼的行為として起立斉唱を求めており、思想・良心の自由を侵害しない」とし、慰謝料請求を棄却した。  判決によると、川口さんは3年生の学級担任だった2008年3月、卒業式の君が代斉唱で起立しなかった。市教委の聴取にも応じず、09年2月に内部処分にあたる訓告処分を受けた。判決後、川口さんは大阪市内で開いた記者会見で「君が代の問題は議論が必要」として控訴の方針を表明。門真市教委は「引き続き国歌斉唱・国旗掲揚を適正に実施する」との談話を出した。(岡本玄) Asahi.com

2012年2月1日水曜日

公務災害の訴え棄却 高校野球部監督教諭の過労死 甲府地裁(しんぶん赤旗 2012.02.01 B版)

2006年3月、山梨県立白根高校教諭の野球部監督だった山形功さん=当時40歳=が急死した原因をめぐり、「公務外の災害」とした地方公務員災害補償基金山梨支部の決定は不服として、遺族で妻の真弓さん(40)=同県冨士川町が公務災害の認定を求めて起こした裁判で31日、甲府地裁は遺族の訴えを棄却する判決を出しました。

林正宏裁判長は「死亡前6カ月の時間外勤務時間(月平均)は77時間53分」などとし「野球部監督としての公務による負荷が著しく過重であったとは認められない」としました。

判決後、真弓さんは「労災認定を確信していただけに信じられない思いです」と声を詰まらせ、控訴する意向を表明しました。

裁判で原告側は「野球部の朝練習指導のために7時50分に出勤しており、この時間を加えるだけでも時間外勤務時間(月平均)は88時間をこえる」と主張していました。
この始業時間について、判決は「おおむね7時50分ころに出勤していた」と認めましたが、「授業の準備やその他の雑務の処理のために毎朝7時50分に出勤することを余儀なくされていたとは認められない」としました。

原告代理人の松丸正弁護士は「全国の野球部監督の先生方の努力が報われない不当な判決。『ほどほどにしておけ』といわんばかりの現場を見ない内容」と批判しました。

職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(厚生労働省 2012.01.31)

~「職場のパワーハラスメント」の予防・解決に向けた労使や関係者の取組を支援するために、その概念や取組例を整理~

 厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」(主査:佐藤博樹東京大学大学院情報学環教授)では、職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」が、近年、社会問題として顕在化してきていることを踏まえ、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」(座長:堀田力さわやか福祉財団理事長)からの付託を受けて、昨年7月から、(1)この問題の現状と取組の必要性、(2)どのような行為を予防・解決すべきか、(3)この問題への取組の在り方等について議論を重ねてきました。

 本日開催した第6回会合で、円卓会議への報告を取りまとめましたので、公表します。円卓会議は今後、この報告を基にさらなる議論を行い、本年3月を目途に、この問題の予防・解決に向けた提言を取りまとめる予定です。

【報告のポイント】
1.はじめに:なぜ職場のいじめ・嫌がらせ問題に取り組むべきか(報告書p1~4)
  職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」は労働者の尊厳や人格を侵害する許されない行為であり、早急に予防や解決に取り組むことが必要な課題である。
企業は、職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」による職場の生産性の低下や人材の流出といった損失を防ぐとともに、労働者の仕事に対する意欲を向上させ、職場の活力を増すためにも、この問題に積極的に取り組むことが求められる。

2-1.職場からなくすべき行為は何か(報告書p4・5)
  「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」という言葉は、どのような行為がこれらに該当するのか等、人によって判断が異なる現状があるが、とりわけ、同じ職場で行われる「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」については、業務上の指導との線引きが難しいなどの課題があり、労使の取組を難しいものとしている。
そのため、ここでは、労使が予防・解決に取り組むべき行為を以下のとおり整理し、そのような行為を「職場のパワーハラスメント」と呼ぶことを提案した。

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(※)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。
※ 上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。
 
2-2.職場のパワーハラスメントの行為類型(報告書p5・6)
  職場のパワーハラスメントの行為類型を以下のとおり挙げた(ただし、職場のパワーハラスメントのすべてを網羅するものではないことに留意する必要がある。)。
類型 具体的行為
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

3.労使の取組(報告書p6~10)
  この問題を予防・解決するための労使の取組については、まず、企業として職場のパワーハラスメントはなくすべきという方針を明確に打ち出すべきである。
対策に取り組んでいる企業・労働組合の主な取組の例と、取り組む際の留意点は以下のとおり。

予防するために
 ○トップのメッセージ
 ○ルールを決める
 ○実態を把握する
 ○教育する
 ○周知する

解決するために
 ○相談や解決の場を設置する
 ○再発を防止する

行政は、
・問題の現状や課題、取組例などについて周知啓発を行うべき。
・併せて、この問題についての実態を把握し、明らかにするべき。